2011年3月6日日曜日

12人の優しいおっさんたち(2008/08/27 17:25:20)

ニキータ・ミハルコフの新作「12人の怒れる男」、  12
長~い映画なので、1回目の開映が9:20なのです。
でも、頑張って7時台に家を出て、シャンテ・シネに9:15くらいについたのではないかしら?
初回は自由席なので、まずは席を確保。それからプログラム購入。
満員というわけではないけど、空いているというわけでもなく、それなりに人は入っています。
(2回目は結構人が並んでいて混みそうな感じがありました。)
 
事前情報としては、
・シドニー・ルメットの作品(こちらは「十二人の怒れる男」←≠「12」)とはかなり違っている。別作品と思った方がいい。
・最後はミハルコフが「いいとこ取り」だが、その最後のところまではミハルコフは静かだ。
反ミハルコフ派も黙らせ、「上手い!」「才能あるね」と言うしかない、素晴らしい作品。
 ただ、長いから心して観に行ってね。
・一人ひとりの役者さんの見せ場が舞台のよう。
・悪者は出てこないから、安心して観ていられる
といったものでした。
(最後のはちょっと嘘。でも「意外なラスト」とか言うと、「じゃあ、陪審員の誰かが犯人?」とか思ってしまうところ、それはないなと安心することができた。)
 
 
ええ、ええ、確かに、上手いですね。才能ありますね。面白かった(私は結構笑い転げていました)し、長さなんて全然気にならない。ミハルコフが話を切り出したところで、「あ~ん、もうラストに近いのか」と残念に思ったほど。
大傑作!みんな、観にゆくべし!
 
とはいえ、別に反ミハルコフ派ではないが、一言二言。
★陪審手続きについては疑問に感じる部分※が少々あったのだが、プログラムに沼野充義先生が書かれているものによると、やはり現行のロシアの司法制度からは「映画的」逸脱しているところがあるとのことなので、それは納得。
 ※最大の疑問は、「そもそもこれは陪審にかかるケースなのか?」というもの。次に感じたの陪審員の人選に関してで、以下のとおり。その他については略。
★基本的におっさんばかり(12人の陪審員+廷吏)で、チェチェン人美少年(被告人)が登場する場面は少ない(回想シーンは子役が演じているので)し、女性はそのチェチェン人美少年のお母さんと裁判長(ナタリヤ・スルコヴァ)くらいしか出演しない。
★陪審員たち、民族に関してはばらけているが、おっさんばかりというのは、相当不自然である。
 (「十二人の怒れる男」が1997年にリメイクされた際には陪審員には女性も黒人も配されて、<現代化>されている。)
 女性が一人もいないのはあり得ないと言っていいほどおかしいし、年配者に片寄りすぎているのも、陪審の公平性から言うと好ましくない。
 容疑者となっているのは若者であり(мальчик(少年)と呼ばれているけれど、それほど幼くはなく、実は成人年齢に達しているから少年審判ではなく成年の刑事手続きとして陪審にかかっているのかもしれない)、もう少し彼の年代に近い人が陪審員にいないとまずいのではないかしら。
★とは言え、陪審員を全部おっさんにした理由、おっさんにしなければならなかったわけはわかる。
 作品中、陪審員が代わる代わる自分の人生を語り出してしまう。←ロシア的だ!
 そして皆それぞれしんみりさせるような苦労を背負ってきているわけだけど、ロシア女性の人生なんていったら男性の数倍は大変なのだから、もう収集がつかなくなるもんね、きっと。
 3時間でも4時間でも足りなくなるよ、上映時間が。
 若者を入れなかったのは、逆にそういうエピソードを入れ込めないと判断したのだろうと思う。
★で、オールおっさん陪審員団、男性には実にありがちな、というかミハルコフらしいなあ・・・と思わせた台詞は「嫉妬だよ、悪意はない、嫉妬なんだ、女の嫉妬」
 別に「女の」はなくても話は通じる部分なのだが。
 そうなの。男性は時に、嫉妬は女性に特有で、男性は(自分は)そういうものと無縁であるかのような態度をとるけれど、私に言わせると「随分大きな棚を持っているんだね、自分のことを挙げておくための」である。
 ミハルコフみたいに、現実にモテる男からはこの手の発想は生まれやすい。
 よくよくあることなので、大抵はスルーするけれど、ちょっと機嫌が悪いと上記のような皮肉も言うことがあります。
★やはりミハルコフらしいと感じたのは、「チェチェン」の描き方。
 なんかロシア政府のチェチェンに関する見解を反映しているような
・回想場面で登場するチェチェン人の武装集団は感じの悪い描かれ方をしている。
 チェチェン人美少年の両親は武力行動を嫌っているようで、見ようによっては両親を殺したのはロシア軍ではなく、独立派の武装集団である可能性も否定していないような・・・。
・対してロシア軍将校は孤児になったチェチェン人美少年を養子に引き取るなど、情け深いものとして描かれる。
見せ場はレズギンカ(カフカスの伝統舞踊)とナイフ捌き。
 カッコいい!いかにもカフカス、というもの。
 エキゾチックで、勇壮で、潔くて、且つ野蛮でもある、というロシアからの目線。
・戦闘場面は、今まで観てきたた、カフカスの紛争に係るいろいろな作品にも増して恐ろしかった。
 言葉を失うくらいに。
 どうか今後こんな光景が繰り返しませんように!!!
 
こう書くとあんまり褒めていないみたいかもしれませんが、93点!
巨匠ミハルコフの社会派娯楽大作として、誰もが楽しめます!
敢えて娯楽って言ってしまうよ。
 
フォメンコ工房とかが舞台化して、来日公演しないかなあ・・・。
 
ここにもレビューを書いておきました。

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