2011年3月6日日曜日

嬉しい新訳(2008/08/16 18:42:18)

『カラマーゾフの兄弟』が一大ブームになった光文社古典新訳文庫の中で、私のお気に入りは浦雅春先生訳の『鼻/外套/査察官』。
江川卓先生による先例はあるものの、<落語調>の訳という楽しいものです。
読んでいると、なんだか黒田龍之助先生が「するってえと」なんておっしゃっているような気になります。(黒田龍之助先生は気を抜くと「・・・てえことになりますね」みたいに江戸弁がちらっと出るのだ。)
昨年度のNHKラジオ講座応用編で井上幸義先生の『鼻』の講読は、とっても詳しくて素晴らしかったけれど、ああやって精読してみると、浦先生はかなり大胆に落語調にされているということがわかりますね。(でもそれを「誤訳」とは言わないと思う。)
 
さて、7月には望月哲男先生による光文社古典新訳文庫の『アンナ・カレーニナ』の1巻2巻が出されました。
これは、本文の新訳もさることながら、実は解説が楽しみ。当時のロシアの離婚裁判のやり方が詳しく書かれていてありがたい。無論、破綻主義の日本法とは考え方がまるで違う。
9月9日は第3巻が出るそうだ。
 
亀山先生の『カラきょう』の解説は、特に最終巻については、解説というより自説の展開だったので、「はあ」とは思ったけれど、ちょっとついていけないという部分も多かった。分量あったしねえ。読み終わってから、「別の著作を著した方がよろしかったのでは?」と思ったら、先生、ほんとに書かれましたしね。
 
2006年刊行の藤沼貴先生訳の『戦争と平和』も、解説が詳しくてありがたい。
お話自体は手術後に自宅療養していた1か月のうちに、ラジオ講座応用編の原文講読と合わせて、大急ぎで読んだものでした。
そのあと、ボンダルチュク監督の例の映画を4回観たのですが、ああいう生真面目に原作に即した文芸映画が一通りは揃っているというのは、文芸大国ソ連のありがたいところ。
(最近のロシアでも、TVドラマではいろいろ作っているようですが、日本での公開とかDVD発売になるのはそのごくごく一部なのが悲しい。)
 
ロシア文学ではないのですが、ソ連・ポーランド合作映画「ピルクスの審問」の原作、スタニスワフ・レムの『宇宙飛行士ピルクス物語』の新訳が文庫で出るそうです!
この映画、ソ連映画きってのアイドル俳優、ウラジーミル・イワショフさんが若干やな男役で出演。「誓いの休暇」からは15年くらい経っているけれど、若々しくて素敵です。
(彼が出てくるまでストーリーなんかどうでもいいやみたいな気持で観ていたことを告白します。)

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