一昨年の秋、光文社古典新訳文庫が刊行され始めたとき、S上司の机に『カラマーゾフの兄弟1』が置かれていました。
息子さんがその年ロシア語学科に入学したということもあったかもしれない。でも、Sさんは元々ロシア文学の素養があるのです。Sさん、数年前「ロシア文学って『罪と罰』とか『どん底』とか、なんか暗いタイトルだよね」と話しかけてこられたことがあります。「そういうの、実際にお読みになったのですか?」と尋ねると、「皆読んでいたからね、ドストエフスキーは」とのこと。(注:『どん底』はドストエフスキーではなくてゴーリキーです) ははは。私は、<『罪と罰』とか『どん底』とか>については、その時点では未読だった(映画やお芝居で観ただけ)のです。「皆ドストエフスキーを読んでいた」ような世代ではなかったので(むしろだ~れも読んでいなかった、と言った方がよい)、と言い訳。
ロシア語講座に通うようになってから、先生やクラスメイトの話を聞いていると、なんだかロシア文学っておもしろそう、読まなきゃ損だという気がして、あれやこれや読み始めたのでした。音楽(特にクラシック音楽)もオペラもバレエも、基本的な素養は持ち合わせておらず、皆の話で「おもしろそう」という気になって首を突っ込むようになったのです。
最初に読んだのは、どういうわけかイリヤ・エレンブルクの『雪解け』。歴史用語としては有名でも、実際にこの小説を読んでいる人はあまりいないかも。そうですね、およそ「文豪」っぽくない、一言でいうとメロドラマ。文学的な価値は必ずしも高くないのかもしれません。しかし、私はこれを読んで、ソ連の人々もごく普通の悩み・苦しみを持ち、ささやかな幸せを願って生きているんだなあ、としみじみと思いました。最初に読んだのがドストエフスキーなどのエキセントリックな設定での大作でなくて、かえってよかったのではないか、と自分では思っています。
次はたぶん、ファジーリ・イスカンデールの『牛山羊の星座』。これは笑えた!皆さん、読んで笑いましょう。
井上幸義先生に教わっていた時、クラスメートの「先生のお勧めの小説は何ですか」という質問に対して、「イスカンデール」と挙げられていたので。加えて、黒田龍之助先生も「お勧め」としてイスカンデールを挙げられていたので、これはきっといいだろうと思いこんで、図書館の閉架書庫から借り出して読んだのでした。
その次が沼野充義先生訳セルゲイ・ドブラートフの『わが家の人々』。ラジオ講座応用編で「これは愛じゃない」を聴いていて、とてもおもしろかったので、単行本が出たらすぐに読みました。
さて、私はS上司の「ロシア文学は暗い」とでもいうようなお言葉に、「最近のロシア文学はそんなに暗くないし、とってもおもしろいですよ」と答えたのです。「どんなものがあるの?」と問われて、「日本語訳が最近出ているものでは、アクーニンの『アザゼル』とか、イスカンデールの『チェゲムのサンドロおじさん』とか、ドブラートフの『かばん』とか・・・」と答えながら気がついたのですが・・・。
アクーニンも、イスカンデールも、ドブラートフも、皆ロシア人ではない!おっと、文豪の国ロシアで、ロシア人作家はどこへ??あとになってから、トルスタヤとか思いついたのですけどね。
さて、ポプラ社から今般『諸国物語』という<12ヶ国の文豪の中・短編集>が刊行されました。<知られざる傑作>がうたい文句の世界文学アンソロジー。毎日新聞の書評欄に載っていました。最多は(やはり)ロシア。
・「かけ」チェーホフ/原卓也訳
・「三つの死」トルストイ/中村白葉訳
・「鰐」ドストエフスキー/米川正夫訳
・「片恋」ツルゲーネフ/二葉亭四迷訳
ロシアのものに関して言えば、必ずしも<知られざる>ではないような気もしますが・・・。新訳でもないのですね。
ところで、S上司の机には光文社古典新訳文庫の『カラマーゾフの兄弟』1~5が、今も積まれています。Sさん、古典新訳文庫なら、先に浦先生のゴーゴリの落語調訳を読みませんか?
息子さんがその年ロシア語学科に入学したということもあったかもしれない。でも、Sさんは元々ロシア文学の素養があるのです。Sさん、数年前「ロシア文学って『罪と罰』とか『どん底』とか、なんか暗いタイトルだよね」と話しかけてこられたことがあります。「そういうの、実際にお読みになったのですか?」と尋ねると、「皆読んでいたからね、ドストエフスキーは」とのこと。(注:『どん底』はドストエフスキーではなくてゴーリキーです) ははは。私は、<『罪と罰』とか『どん底』とか>については、その時点では未読だった(映画やお芝居で観ただけ)のです。「皆ドストエフスキーを読んでいた」ような世代ではなかったので(むしろだ~れも読んでいなかった、と言った方がよい)、と言い訳。
ロシア語講座に通うようになってから、先生やクラスメイトの話を聞いていると、なんだかロシア文学っておもしろそう、読まなきゃ損だという気がして、あれやこれや読み始めたのでした。音楽(特にクラシック音楽)もオペラもバレエも、基本的な素養は持ち合わせておらず、皆の話で「おもしろそう」という気になって首を突っ込むようになったのです。
最初に読んだのは、どういうわけかイリヤ・エレンブルクの『雪解け』。歴史用語としては有名でも、実際にこの小説を読んでいる人はあまりいないかも。そうですね、およそ「文豪」っぽくない、一言でいうとメロドラマ。文学的な価値は必ずしも高くないのかもしれません。しかし、私はこれを読んで、ソ連の人々もごく普通の悩み・苦しみを持ち、ささやかな幸せを願って生きているんだなあ、としみじみと思いました。最初に読んだのがドストエフスキーなどのエキセントリックな設定での大作でなくて、かえってよかったのではないか、と自分では思っています。
次はたぶん、ファジーリ・イスカンデールの『牛山羊の星座』。これは笑えた!皆さん、読んで笑いましょう。
井上幸義先生に教わっていた時、クラスメートの「先生のお勧めの小説は何ですか」という質問に対して、「イスカンデール」と挙げられていたので。加えて、黒田龍之助先生も「お勧め」としてイスカンデールを挙げられていたので、これはきっといいだろうと思いこんで、図書館の閉架書庫から借り出して読んだのでした。
その次が沼野充義先生訳セルゲイ・ドブラートフの『わが家の人々』。ラジオ講座応用編で「これは愛じゃない」を聴いていて、とてもおもしろかったので、単行本が出たらすぐに読みました。
さて、私はS上司の「ロシア文学は暗い」とでもいうようなお言葉に、「最近のロシア文学はそんなに暗くないし、とってもおもしろいですよ」と答えたのです。「どんなものがあるの?」と問われて、「日本語訳が最近出ているものでは、アクーニンの『アザゼル』とか、イスカンデールの『チェゲムのサンドロおじさん』とか、ドブラートフの『かばん』とか・・・」と答えながら気がついたのですが・・・。
アクーニンも、イスカンデールも、ドブラートフも、皆ロシア人ではない!おっと、文豪の国ロシアで、ロシア人作家はどこへ??あとになってから、トルスタヤとか思いついたのですけどね。
さて、ポプラ社から今般『諸国物語』という<12ヶ国の文豪の中・短編集>が刊行されました。<知られざる傑作>がうたい文句の世界文学アンソロジー。毎日新聞の書評欄に載っていました。最多は(やはり)ロシア。
・「かけ」チェーホフ/原卓也訳
・「三つの死」トルストイ/中村白葉訳
・「鰐」ドストエフスキー/米川正夫訳
・「片恋」ツルゲーネフ/二葉亭四迷訳
ロシアのものに関して言えば、必ずしも<知られざる>ではないような気もしますが・・・。新訳でもないのですね。
ところで、S上司の机には光文社古典新訳文庫の『カラマーゾフの兄弟』1~5が、今も積まれています。Sさん、古典新訳文庫なら、先に浦先生のゴーゴリの落語調訳を読みませんか?
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