ロシアの人に最も愛されている映画は「運命の皮肉」とか「黄金の腕」とか、ダネリヤやガイダイ、リャザーノフなんかのお気楽コメディーなのだろうが、この「誓いの休暇」は人間、特に若者の善良さと戦争による悲劇とを描いた、美しい作品であって、<ソ連映画>の水準の高さを改めて世界に知らしめた映画だったのでしょう。
私自身、この映画は何とも言わず、ぐっとくる。主人公アリョーシャ役のウラジーミル・イワショフ大好き!
偶然立てた戦功のご褒美である特別休暇で、「実家に戻って屋根を直したい」と母のいる故郷をめざしているのに、アリョーシャはすごく善良な若者なので、いろいろ周囲の人に親切にしてしまって、思わぬ遠回りをせざるを得なくなって、どんどん時間が経ってしまう・・・という筋だけに、この映画の中では、アリョーシャは何度も何度も「Уже пора.(出かける時間だ)」って言うのですね。
(なのに、相手はそこを引き留めたりするのだ。)
あと、Надо идти.(もう行かなきゃ)とかПошёл.(もう行くよ)とか。
で、私も「ああ~、ほら!もう行かなきゃ、アリョーシャ!!」と、せき立てたくなってしまう。
ようやく母と再会して、ほんの一瞬抱擁し合い、再び彼は戦場へ。ここでも「もう行かなきゃ」なのだけど、それは言わなくてもお互いわかっている。
この映画、何度も観たのだけれど、2回目・3回目くらいのときは、観始める時「あれ、これってモノクロだったんだけ」と、なんだか変な気持になった。
母と再会してすぐに出立するラストの麦畑のシーンが、私の頭の中ではすっかり黄金色の麦の穂という背景が刻み込まれているのでした(←勝手に色をつけている私)。
まるでパーヴェル・レベジェフが撮ったかのような錯覚が生じていたのでした、しかもそれが一度ならず・・・。
だめだよ、だめだよ、「行かなきゃ」なんて、「もう戦場に戻らなきゃ」なんて。
と、毎回のように最後に泣いてしまうのでした。
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